
メッセージ
新しい技術を研究開発する喜びとともに
想像をはるかに超えた未来を創る
大学院情報科学院/大学院情報科学研究院
学院長/研究院長
教授近野 敦
実空間とサイバー空間を行き来し、
社会をより豊かに、便利に、安全にする情報科学
ここ数年の情報科学の特徴は、情報がサイバー空間と実空間を自由に行き来し、実空間に作用できるようになったことです。例えば、カーナビゲーションは自動車がどこを走行しているかをGPS(Global
Positioning
System)で検知し、地図と照合し、最適経路を運転者に案内します。鉄道では、地震が発生すると早期地震検知警報システムがそれを検知し、震源地付近を走行中の新幹線に非常ブレーキをかけます。医療分野では、外科手術ナビゲータが体内の患部の位置を正確に医師に教え、手術をサポートしてくれます。
このように、今では実空間の情報をセンサーがデジタル化してサイバー空間に取り入れ、サイバー空間でコンピュータが最適な行動を探索し、人間に案内したり機械を直接駆動して実空間に作用するようになってきました。情報科学は、技術の発展とともに、社会をより豊かに、便利に、安全なものにしており、これからもそうあり続けると思います。
多分野が集結しているキャンパス、
そこから世界へと広がるネットワーク
新しい技術を開発することは、研究者にとって非常にワクワクすることです。自分が生み出した技術が人を豊かに、便利に、安全にするのであればなおさらのことです。情報科学研究院(研究組織)と情報科学院(教育組織)の担う最大のミッションは、研究者がワクワクしながら人や社会を豊かに、便利に、安全にする技術を開発する環境を整備すること。そして、そのワクワクを学生に伝え、そのような技術を開発できる人材を育成することにあります。

情報科学院には、情報理工学コース、情報エレクトロニクスコース、生体情報工学コース、メディアネットワークコース、システム情報科学コースの5つのコースがあります。情報科学の専門家だけではなく、半導体、電気・電子回路、生命科学、情報メディア、情報通信、システム統合など幅広い分野の研究者が集っています。建物は北海道大学札幌キャンパスのほぼ中央に位置し、総合化学院、工学院、医学院、理学院など他の研究院との距離が近く、異分野融合領域研究も盛んに行われています。
一方で、本学は国内外へ多彩なネットワークを広げています。物質・材料研究機構、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、産業技術総合研究所などの国立研究機関や通信キャリア企業の研究者が、連携分野客員教員として講義や研究指導を行っています。さらに、情報科学研究院に併設されているビッグデータとIoTに関する協同センター(CCB)には、マサチューセッツ大学(UMass)やシドニー工科大学(UTS)の研究者がクロスアポイントメント教員として参画しています。北海道大学という枠を超え、世界トップクラスの研究者の授業を受講し、研究指導を受けることができるのは情報科学院の特徴であり強みでもあります。
近年、急速に注目度が上がっている分野にもいち早く取り組んでいます。そのひとつがAIです。2022年に画像生成AI(Artificial
Intelligence)やチャットAIのアプリケーションが相次いで発表され、AIが人間以上に上手に絵を描いたり、人間と見分けがつかないほど高度にテキスト会話ができるようになりました。これまで以上にAI技術者が必要とされ、次世代AI技術を開発できる人材育成が求められている中、国内外の多様な研究者が集う情報科学院ではAI技術だけではなく、AI技術をさまざまな分野に応用し、社会課題を解決する実践力を身に着けることができます。
もうひとつが半導体です。2023年10月、本学は半導体分野における産学官のハブとなる「半導体拠点形成推進本部」を設置。学内の教育研究部局として情報科学研究院も参画し、半導体分野の教育・研究・社会連携体制の強化に貢献していきます。
さらに、本学は大学改革支援・学位授与機構の大学・高専機能強化支援事業(ハイレベル枠)に採択され、2024年度入学者から工学部情報エレクトロニクス学科の入学定員が50名増え、230名となります。学年進行に合わせ、大学院の入学定員も修士課程は196名から229名へ、博士後期課程は43名から48名へとそれぞれ増員されます。2024年以後の数年間は、工学部情報エレクトロニクス学科、大学院情報科学院/情報科学研究院が大きく飛躍する期間となり、人材育成と研究開発の面で多くの成果が創出されることでしょう。

多様な知識と出会い、世界中の仲間と交流する
大学・大学院は人生を変える場所
自分の人生を変えてしまうような感動に出会える場所、それが大学であり大学院です。現代の情報社会は、パソコンやスマートフォンがあれば世界中の書物や文献が手に入り、あらゆる情報に触れることができます。しかし、大学院で教員や学生、さまざまな国から来た留学生と交流し、異なる文化の中でぶつかり合うことにより、自分一人では思いつかない発想や経験が得られます。それこそが、大学院で学ぶ意義であると思います。
私が子供の頃は、将棋や囲碁でコンピュータが人間を超える時代はまだまだ先のことと考えられていました。しかし現在は、私が思い描いていた未来よりずっと先へ進んでいます。今から20年後は、今の研究者や学生が想像するよりもさらに進んだ世の中になっているかもしれません。情報科学院に所属する学生の皆さんには、人生を変えるような感動に出会い、ワクワクする体験をし、私たちの想像をはるかに超えた未来を創り出してほしいと思います。
